新堂ハイクの旅する教室へようこそ!
古典文法は識別ができて初めてスタートラインです。
今回は「ぬ」と「ね」の識別を解説します!
この記事は
・古典文法は覚えたけど、文法問題が解けない
・古典文法は覚えたのに、古典が読めない
・文法は完璧だけど、もう一度復習したい
という方に向けて基本からわかりやすく解説する記事です。
この記事を読めば
「ぬ」「ね」の識別は余裕!
となりますので、ぜひ最後までご覧ください!
では、ハイク先生お願いします!
はい!
今回は古典文法の最終地点である識別の「ぬ」と「ね」を解説していくよ!
著者 新堂ハイク 29歳 ・現役高校教師 勤続8年(特進クラス担任) ・難関大受験、小論文指導実績500人以上 ・教育メディア運営6年(月間10万PV) ・執筆300記事以上、掲載企業50社以上 実際の教育現場にいる現役教師にしか分からない、リアルな情報をお届けします!
古典文法「ぬ」「ね」の識別とは
ハイク先生!
「ぬ」「ね」の識別ってどういうことですか?
まずは下の表を見てみよう!
基本形 | ぬ | ず |
未然形 | な | (ず) |
連用形 | に | ず |
終止形 | ぬ | ず |
連体形 | ぬる | ぬ |
已然形 | ぬれ | ね |
命令形 | ね | 〇 |
接続 | 連用形 | 未然形 |
上の表の完了の助動詞「ぬ」と打消の助動詞「ず」には、違う活用形で同じ形のものがありますよね。
終止形の「ぬ」と連体形の「ぬ」、命令形の「ね」と已然形の「ね」があります!
同じ「ぬ」と「ね」ですが、完了と打消では文の中で意味が全く変わってきます。
「~てしまった」と「~ない」では、意味が全然違いますよね。
このように、訳し間違えをしないために識別することが必要なのです。
ではどうやって識別するか解説していきます!
「ぬ」の識別
「ぬ」には2つの種類が存在します。
①打消の助動詞「ず」の連体形
未然形+ぬ
②完了の助動詞「ぬ」の終止形
連用形+ぬ
これらを接続と活用形を利用して識別します。
接続による識別
接続による識別とは直前の語の活用形を見ることです。
「咲かぬ」と「咲きぬ」の例を見てみましょう。
咲かぬ
↓
咲か+ぬ
「咲か」は「咲く」の未然形
打消の助動詞は未然形接続である
↓
未然形+ぬ
↓
打消の助動詞「ず」の連体形
訳 咲かない
咲きぬ
↓
咲き+ぬ
「咲き」は「咲く」の連用形
完了の助動詞は連用形接続である
↓
連用形+ぬ
↓
完了の助動詞「ぬ」の終止形
訳 咲いた
このように直前の語の活用形を見て、判断できます。
同じ「ぬ」なのに「咲いた」と「咲かない」では大違いですね!
ただ、この方法では未然形と連用形が同音の場合、判別できなくなります。
例 「見る」 み み みる みる みれ みよ
ホントだ!
こういう時はどうすればいいの?
そういうときは次の方法を使います。
活用形による識別
活用形による識別とは直後の語や記号の接続、係り結びを利用する方法です。
「見えぬ鳥」と「見えぬ。」の例を見てみましょう。
見えぬ鳥
↓
見え+ぬ+鳥
↓
「鳥」は体言
体言に連なるのは連体形
↓
ぬは連体形
連体形の「ぬ」があるのは、打消の助動詞
↓
「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形
訳 見えない鳥
見えぬ。
↓
見え+ぬ+。
↓
「。」に連なるのは終止形
↓
「ぬ」は終止形
終止形の「ぬ」があるのは完了の助動詞
↓
「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」の終止形
訳 見えた
このように、直後の語の活用形や記号を利用して識別することもできます。
実践問題
では、実際に問題を解いてみましょうかさくらさん。
分かりました!
やってみます!
例題
「日かずのはやく過ぐるほどぞ、ものにも似ぬ。」
上の「ぬ」を文法的に説明しなさい。
まずは、接続を見る方法で識別してみましょう。
「似+ぬ」の形ですね。
「似」は「似る」の未然形もしくは連用形です。
ここでは判別できないので次の方法に移りましょう。
次は、直後の語を見る方法で識別してみましょう。
「ぬ」+「。」の形ですね。
「。」が直後に来るということは「ぬ」は終止形です。
つまり、この「ぬ」の文法的説明はどうなりますか?
えと、打消の助動詞「ぬ」の終止形です!
正解です! と言いたいところですが、もう少しよく例題を見てみましょう。
「日かずのはやく過ぐるほどぞ、ものにも似ぬ。」
えっと、これは係り結び?
その通り。
「…ぞ~ぬ」の係り結びがあります。
え~と、じゃあ「打消の助動詞「ぬ」の連体形」かな?
正解です!
最後まで気を抜かないように(笑)
このように文法的説明を求められたら「○○の助動詞●●の☆☆形」と解答します。
覚えておきましょう。
例題
「日かずのはやく過ぐるほどぞ、ものにも似ぬ。」
訳
日数が早く過ぎること(といったら)、ほかにたとえようがない。
次は「ね」の識別の解説です!
「ね」の識別
「ね」には2つの種類が存在します。
①打消の助動詞「ず」の已然形
未然形+ね
②完了の助動詞「ぬ」の命令形
連用形+ね
これらを接続と活用形を利用して識別します。
接続による識別
接続による識別とは直前の語の活用形を見ることです。
「渡らね」と「渡りね」の例を見てみましょう。
渡らね
↓
渡ら+ね
「渡ら」は「渡る」の未然形
打消の助動詞は未然形接続である
↓
未然形+ね
↓
打消の助動詞「ず」の已然形
訳 渡らない
渡りね
↓
渡り+ね
「渡り」は「渡る」の連用形
完了の助動詞は連用形接続である
↓
完了形+ね
↓
完了の助動詞「ぬ」の命令形
訳 渡った
このように、直前の語の活用形を見て判断できます。
これも「ぬ」の識別と同じように、未然形・連用形が同音の場合次の判別方法を使います。
活用形による識別
活用形による識別とは直後の語や記号の接続、係り結びを利用する方法です。
「波こそ越えね」と「波越えね。」の例を見てみましょう。
波こそ越えね。
↓
波+こそ+越え+ね+。
↓
「こそ」は係助詞で結びの語は已然形になる
↓
已然形の「ね」は打消の助動詞にしかない
↓
打消の助動詞「ず」の已然形
訳 波を越えない
波越えね
↓
波+越え+ね。
↓
「。」で文が終わっているので命令形
↓
命令形の「ね」は完了の助動詞にしかない
↓
完了の助動詞「ぬ」の命令形
訳 波を越えよ
このように、直後の語や係り結びを利用して識別することもできます。
実践問題
では、実際に問題を解いてみましょう。
例題
この思ひおきつる宿世違はば、海に入りね。
上の「ね」を文法的に説明しなさい。
まずは、接続を見る方法で識別してみましょう。
「入り+ね」の形ですね。
「入り」は「入る」の連用形です。
次は、直後の語を見る方法で識別してみましょう。
「ね」+「。」の形ですね。
「。」が直後に来るということは「ね」は命令形です。
連用形に接続し、自身は命令形ということは、
完了の助動詞「ぬ」の命令形です!
正解です!
例題
この思ひおきつる宿世違はば、海に入りね。
訳
この(私が)思い決めておいた宿命と違ったら、(我が娘よ)海に入って(死んで)しまいなさい。
最後に、助動詞以外の「ぬ」「ね」を解説しておくよ!
ナ変動詞の語尾
ナ変動詞にも「ぬ」や「ね」が含まれているので注意です。
死ぬ・往ぬ・去ぬ
死ね・往ね・去ね
ナ行下二段動詞の語尾
寝ぬ・寝ね
これらは必ず「〇ぬ」「〇ね」という形になっているので、見分けやすいです!
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